交通事故削減や運転者の負荷軽減への寄与が期待されるなか、欧米ならびに日本で自動運転の実用化研究が推進されている。しかし、ともすれば技術開発が先行し、人に過大な要求をせず、人を慢心させず、人に価値や有効性をもたらす自動運転はどのようなものであるべきか、また、自動運転を想定した法制度はどのようなものであるべきか等は、未だに明らかになっていない。
本研究は、これらの未解決問題を「工学・法学・心理学の融合問題」と捉え、人の認知・判断の特性と限界を考慮した自動走行システムを設計するための基盤理論体系を構築するとともに、自動運転の普及を想定した新しい法理論を開発し、それを具体化した法制度を提案する。
HF研究アスペクトでは、レベル2の自動運転において、システムとの会話を通じて運転者による円滑な監視の継続を可能にする会話のデザイ ン法を明らかにする。また、安心感が冷静な判断を導く一方で、不安感が周囲への注意力や対応力を上げることに着目し、適切な警戒心・覚醒 を維持させる工夫を検討する。さらに、自動運転車と運転者との関係のあり方と運転者が持つべきスキルを人間工学の観点から検討する。特に 、レベル3の自動運転におけるセカンダリタスクについて、運転交代要請への対応迅速性との関係を解明する。
ED研究アスペクトでは、2018年に国土交通省が公表した自動運転車の安全技術ガイドラインに沿った双対制御機構を備えるシステム安全制御 (ミニマム・リスク・マヌーバー)をシミュレータ上に構築し、設計条件を超える事象下での安全制御機構の効果評価を行う。さらに、霧発生 など、自動運転システムによる環境認識機能が低下した状況のもとで運転者に権限委譲への準備を促す手法(2018年度開発)をシミュレータ上 に構築し、同手法の効果評価を行う。加えて、長時間の自動運転中におけるドライバの状況認識低下の改善を目的とした触覚デバイスを用いた 情報提示手法、周辺視野域への視覚的刺激提示法の有効性を検証する。
AR研究アスペクトでは、国際的な道路交通をめぐるジュネーブ条約の解釈運用と、国内の道路交通法・道路運送車両法を始めとする法整備の あり方について具体的な提案を行う。また、レベル2及びレベル3の自動運転を対象とし、そこで起こり得る自動走行システムへの過信と誤信 に基づく事故類型を明らかにし、民事責任の視点での法的責任を考察する。また、レベル3の自動運転において、機能に支障が発生したことを 検知したシステムが車上のユーザーに運転交代を要請したにもかかわらず、同人が適時に引継ぎを行わないためにシステムがミニマム・リスク ・マヌーバーを実施している中で事故が発生した折の法的責任の状況依存性を、刑事責任の視点から解明する。
筑波大学, システム情報系
副学長
(60134219)
筑波大学, システム情報系
教授
(00282343)
東海大学, 法学部
客員教授
(60212792)
明治大学, 法務研究科
専任教授
(50366895)
中京大学, 法学部
教授
(50802881)
立教大学, 名誉教授
名誉教授
(10281544)
早稲田大学, 理工学術院
教授
(80178368)
電気通信大学, 大学院情報理工学研究科
教授
(60197415)
湘南工科大学, 工学部
教授
(80454156)
立命館大学, 情報理工学部
教授
(30322564)
新潟大学, 人文社会科学系
准教授
(90513036)
筑波大学, システム情報系
助教
(90770470)