自動車の自動運転を真に社会にとって役に立つものとするために、今取り組み、解決すべき学術的課題とは何か。この問いについて、工学、法学、ヒューマンファクターそれぞれの観点から、最新の研究事例をご紹介するとともに、今後の進むべき方向性について議論します。
科学研究費補助金基盤研究(S)
「人の認知・判断の特性を考慮した自動走行システムと法制度の設計」
世界中で熱狂的に自動運転に関する研究開発が進められ,自動運転できる場面もある程度増えてきた。とはいえ全ての場面で完全な自動化を実現することは不可能であり,自動運転システムが対応できない場面において,運転操作の権限を人間に引き継ぐことを前提にした,自動運転レベル3(SAE J3016(2016))などが想定されている。運転から解放されていた人間を短時間のうちにドライバーとして機能させることは人間特性上,様々な困難が伴うと予想されることから,その対策のために多くの研究がなされている。
本講演では自動運転と手動運転の間に,shared controlを用いた権限共有のモードを導入することで,権限委譲や,その他の課題を解決するいくつかの試みを紹介する。さらに自動運転における車両運動が乗員の快適性や信頼感などに与える影響についても議論したい。
自動運転レベル3は,システムからドライバーへの運転操作引継ぎが予定されているため,運転者及び製造者の責任関係が複雑になる。2019年5月の道路交通法の改正内容を踏まえて,運転者の道路交通法上の義務内容を分析し,自動運転レベル3の運転操作引継ぎ時における運転者及び製造者の刑事責任について考察する。
世界各国で自動車の自動運転システムの開発が急速に進められているが、競争を意識しすぎるせいか、考察が不十分なまま見切り発車的に開発が進められているように思われる。たとえば、レベル2の自動運転において、システムが横方向制御を行っているときでも運転者にハンズオンを求める流儀があるが、妥当だろうか。また、ドライバーモニタリングの重要性が声高に主張されているが、自動運転のレベルが2なのか3なのかによって、結論は大きく変わるのではないだろうか。
本講演では、上記課題を含め、自動運転に関する未解決技術課題を考察する。
氏名,所属,メールアドレス(差し支えなければ)の情報を,下記のフォームからご登録願います。
筑波大学 システム情報系 認知システムデザイン研究室 伊藤 誠
itoh[at]css.risk.tsukuba.ac.jp
(@をスパム防止のために[at]に変えております)